-
「現代天文学入門」開講 – 宇宙を学ぶ新たな視点を –
本学で「現代天文学入門」(総合科学特論)という講義を開始しました。「天文学とは何か?」「宇宙とは何か?」という問いかけから出発し、天体観測の原理、恒星や銀河といった天体の性質、そして宇宙全体の構造と進化まで、天文学の基礎から最新の研究成果に至るまでを網羅的に取り上げます。宇宙に関する多様なトピックを扱い、それぞれのテーマについて平易に解説することで、天文学の全体像を把握し、宇宙への理解を深めることを目指します。天文観測とは何か、私たちはどのようにして宇宙の姿を知るのか — そうした問いにも触れながら、観測を支える望遠鏡や観測装置の仕組みや工夫についても紹介します。日常では遠く感じられる宇宙に科学的な視点から光を当てることで、学生たちの新たな発想や関心が生まれることを期待しています。 工業大学において工学を学ぶ学生に、自然科学としての天文学を学ぶ機会を提供することには、大きな意義があると考えています。ものづくりや技術開発に取り組む上でも、自然そのものへの理解や好奇心は創造性の源となり得ます。宇宙という極限の世界を科学的に捉える視点が、学生たちの視野を広げ、将来の技術的挑戦に新たな刺激・ヒントを与えてくれることを期待しています。
-
オーストラリア滞在 2025
諸隈 智貴 研究打ち合わせのため、2月末からオーストラリアに来ています。パースの University of Western Australia で約10日間過ごし、3月7日からはシドニー・Marsfieldにある CSIRO (Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation) の ATNF (Australia Telescope National Facility) に滞在しています。 昨年、約3週間の滞在中にATNFのBaerbel Koribalski氏と”奇妙な電波サークル” (Odd Radio Circles; ORCs[*])に関する共同研究を開始しました。今回の滞在では、最近取得した Keck 望遠鏡 KCWI による可視光面分光データ…
-
常田所長 TMT国際天文台の評議会に出席
TMT (Thirty Meter Telescope 30m望遠鏡) は、ハワイ島マウナケア山頂に建設予定の世界最大級の望遠鏡で、日本が主力メンバーとして参加しています (https://tmt.nao.ac.jp/)。TMT国際天文台評議会は、その運営方針や重要事項を決定する会合で、参加機関の代表で構成されています。常田所長は、評議会の共同議長を務めています。 2024年8月、10月に引き続き、2025年2月に開催された評議会では、TMTの建設再開に向けた審議や議決が行われました。常田所長は「TMTを絶対に建設するとの覚悟で評議会を運営している」と語っています。
-
北海道芦別市での小学生向け講演会
2025年1月15日に北海道芦別市が開催した講演会「冬季やさしいサポート教室」において、秋田谷(天文学研究センター・惑星探査研究センター上席研究員)が「星空ツアーと宇宙のなはし」と題して講演を行いました。芦別市内の小学校から23名のお子さんに参加いただきました。 国立天文台が提供するシミュレータソフトウェアMitakaを用いてスクリーン上で宇宙の広さを実感してもらったあとで、最近の夜空のみどころや将来の月食・日食の案内を行いました。お子さん達からの元気な反応が絶えず、最後まで楽しくお話させていただきました。 市域の約9割が森林に覆われる芦別市では「星の降る里」を宣言し、美しい夜空を活かしたまちづくりを進めています。お子さん達にとって、今回の講演が夜空を眺めるきっかけになり、自分たちのまちの素晴らしさを再認識する機会になれば幸いです。 講演会について、北海道新聞記事(1/16日付)および芦別市広報誌「広報あしべつ」令和7年2月号において紹介されました。また、今回の訪問では荻原貢芦別市長にも歓迎いただきました。市長へのご挨拶については、芦別市ウェブページ内「市長動静」に掲載されました。
-
常田所長が「九州宇宙開発ビジネス交流会・鹿児島県宇宙ビジネス創出推進研究会」で講演
常田所長が、九州航空宇宙開発推進協議会、鹿児島県、経産省九州経済産業局共催の標記会合で、「宇宙政策の最近の動向と宇宙ビジネス」という題目で講演を行いました (https://kyukoukyo.jp/project/spacebiz/events/kagoshima-spacebiz/)。 「40年強の研究者生活で、内之浦の射場に通算1年近くいたことになろうか。内之浦町(肝付町)の方々に研究を支えていただいた。研究者の交流の場としての役割も大きかった。ありがとうございます。」と述べて、講演を締めくくりました。企業関係者によるパネル討論や講演もあり、宇宙ビジネス、行政、学術、非宇宙ビジネスなど幅広い方々がオンラインも含めて約500人出席しました。
-
常田所長 AURA Solar Observatory Councilに出席
Association of Universities for Research in Astronomy (AURA、天文学研究のための大学協会) は日本ではあまり知られていませんが、米国において、地上宇宙を問わず国立科学財団 (NSF) と NASA の世界最先端の観測施設の運用等を一手に引き受けている非営利組織です。AURAの運用する観測所群には、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) やハッブル望遠鏡のほか、まもなく運用の始まるルービン天文台などがあります。コロラド州ボルダーとハワイのマウイ島にあるアメリカ国立太陽天文台 (NSO) もAURAの運用する主要観測施設の一つです。AURAのSolar Observatory Council (太陽天文台評議会) の評議員として、常田所長がマウイ島で開催された評議員会に出席しました。 評議員会では、NSO全体、特に主力望遠鏡のダニエル・K・イノウエ太陽望遠鏡 (DKIST) の運用状況について、技術面、科学成果の創出状況、予算や人員体制などあらゆる面から検討します。これには、NSOの将来計画の検討も含まれます。評議会は、AURAへの推奨事項を含む報告書をまとめて、終了しました。評議員会にはAURA長官・副長官も出席しており、ボトムアップとトップダウンがいっしょになって米国の太陽の研究を盛り立ていく体制は見習いたいものです。
-
常田所長 ITER訪問
ITER (イーター) は、核融合エネルギーの実用化を目指した国際プロジェクトで、日本を含む7国が参加し、南フランスで核融合炉の建設が進められています。ITERは、入力エネルギーの約10倍のエネルギーを長時間に渡って取り出せることを、科学的・技術的に示すことを目的とした実験炉です。マルセイユ近郊に建設中のITERを視察し、関係者と懇談しました。今回面談した3人の方々は、経営層に近い職責ないし上級マネジャー職にある日本人で、使命感をもって任務に取り組んでおられることに強い印象を受けました。日本人職員数は、その出資比率約9%に比べてやや少ないようで、この巨大事業にもっと日本人が加わると良いと感じました。このためには、日本国内でITERの重要性がもっと認識され、注目される存在になることが大事だと思います。 写真は核融合炉の真空容器の一部です。高さ約11m・幅6mのこのセクターが9個集まって、変形ドーナツ型の巨大真空容器となります。真空容器を保持する巨大な治具に注目してください。これらは、一つ一つ核融合炉棟に運ばれ、組み立てられます。
-
常田所長がフランス ル・ブルジェ航空宇宙博物館の科学諮問会議に出席
フランスル・ブルジェ航空宇宙博物館科学諮問会議委員として、同博物館の科学諮問会議に出席しました。 パリ郊外のル・ブルジェにある航空宇宙博物館(Le musée de l’Air et de l’Espace (MAE) du Bourget) は1919 年に設立され、世界最古かつ最大級の航空宇宙博物館といわれています。この博物館は、フランス国防省下の行政機関で、民間と軍事、フランスと海外の航空分野全体を展示するという使命があります。科学諮問会議の議長は、CNES(フランス宇宙機関)のジャック・アルヌールさんで、宇宙機関に所属する哲学者・倫理学者として知られています。外国人委員は、ドイツと日本からそれぞれ1名で、フレンチな雰囲気の中で異邦人となるかと思いましたが、館長、議長などから歓迎されました。
-
常田所長 量子科学技術研究開発機構・核融合実験装置JT-60SAを視察
量子科学技術研究開発機構・那珂フュージョン科学技術研究所を常田所長が訪問し、核融合実験装置JT-60SAの見学と関係者との懇談を行いました。JT-60SAは、フランスに建設中のITER (International Thermonuclear Experimental Reactor、国際熱核融合実験炉) の先駆けとしての役割のほかに、ITERより高い定常プラズマ圧力を実現し原型炉へつなげる役割もあります。研究所幹部の方々とは、天文学の大型計画との比較も話題になりました。JT-60SAが大きな成果をあげる予感をもって、研究所をあとにしました。